災害時のBCP(事業継続計画)を考える!BCPの重要性や策定の基本フロー、災害別対策例を紹介

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近年、企業では自然災害による被害や世界的な感染症拡大などにおける事業継続への影響が危惧され、あらゆる緊急事態への対応が求められています。企業として災害対策や事業復旧を考える際、BCP(事業継続計画)の策定は必要不可欠です。この記事では、BCP策定の基本フロー、災害別対策例を具体的に紹介し、企業が災害に備えるべき理由を解説します。

災害時におけるBCP(事業継続計画)の重要性

BCP(Business Continuity Plan)とは、企業や組織が自然災害やテロ攻撃などの緊急事態に直面した際に、最小限の損害にとどめながら業務を継続・運営するための事業計画であり、事業継続計画といわれます。災害時において、BCPは企業が存続し業務を継続的に遂行することができるように補助する役割を持ちます。

地震や洪水、台風など自然災害や、事故やテロなどの人為災害、世界的な感染症拡大、サイバー攻撃など、災害の種類は多岐にわたります。しかし、これらの緊急事態は予測困難であり、発生すれば企業の経営活動に甚大な影響を及ぼします。そのため、企業は事前にリスクを洗い出し細かく想定したBCPを策定し、適切な対策を講じることが重要です。

企業が災害対策としてBCPを策定すべき理由

まず、自然災害によって企業に与えられる損失は甚大であり、災害からの早期復旧は継続的な事業活動において不可欠です。ここでは、災害時におけるBCPが果たす役割を解説します。

自然災害や新たな災害下でも事業を継続するため

近年、自然災害の発生が増加し、企業に多大な影響を与えています。日本では、2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨、2023年の能登半島地震などが記憶に新しいでしょう。自然災害の中でも、地震や津波による被害は多くの命を奪い、地域の企業に多大なる損失を与えます。復旧ができずに事業継続が困難となったケースも存在します。

こうした自然災害の増加を受け、企業は従来のリスクマネジメントや防災対策に加え、BCPの策定や見直しを行うべきという考え方が普及してきました。BCPによって、再び災害が発生した際に事業継続ができる組織体制を整備し、損失の最小化を図ることが可能になります。また、近年の感染症蔓延やテロの脅威も、企業の事業継続に影響を与えるため、自然災害に留まらず起こりうるリスクを想定したBCP策定が課題となっています。

総じて、近年の自然災害や緊急事態に対応するために、企業は事業継続計画を適切に策定し、運用することが不可欠です。

従業員の安全と安心を守るため

BCPの策定は、あらゆる災害において「従業員の安全と安心を守る」ためにも重要です。災害時に従業員がどのように行動すべきかを、BCPによって明確にすることで、現場の混乱を防ぎ迅速な避難や対応を促すことができます。BCPを策定・周知徹底することで従業員の不安を軽減し、安心して業務に専念できる環境を整えることができるのです。

企業の信用を守る

そして、災害時に企業の信用を守る点でも、BCPは重要な役割を果たしています。災害時に適切な対応ができない場合、企業は取引先や顧客からの信頼を失い、ビジネスに悪影響を及ぼす可能性があります。BCPを策定し公表することで、取引先や顧客などのあらゆるステークホルダーに対して、企業の「信頼性」をアピールし、ブランドイメージの維持・向上につながります。
また、取引先や地域社会との連携を強化し、自社の従業員だけでなく地域住民の安全確保に貢献することも可能です。危機時の支援体制を確立することもまた、社会貢献としての一面をアピールできるでしょう。

内閣府では、2005年10月に「事業継続ガイドライン」第一版を発表し、災害時の教訓をもとに改訂しています。2023年3月に改定された最新版では、テレワークやオンラインを活用した意思決定を行える仕組みの整備などに言及しています。
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/sk_04.html)災害や緊急事態への対応は日々変化していく中、企業はあらゆる事態に対応できるように、平常時よりBCPを策定し継続的に更新していく姿勢が求められています。

BCP策定を成功させる基本的な流れ

災害時のBCPは、以下の基本的な流れに沿って策定し運用しましょう。

1.自社のリスクを確認し事前対策を検討

まず始めに、自社が直面する様々なリスクを確認することが重要です。地震や火災、感染症などのリスクに加え、サプライチェーンや基幹システムに関する脆弱性も考慮に入れましょう。リスク確認後、事前対策(災害や事故が発生する前に準備を整え、事業の中断を最小限に抑えるための重要なステップ)を検討することで、被害の最小限化や事業継続に必要な手段を明確にすることができます。具体的な対策としては、以下のようなものがあります。

リスク評価と分析

・リスクアセスメント:自然災害、サイバー攻撃、火災、停電など、企業に影響を与える可能性のあるリスクを特定し評価します。
・ビジネスインパクト分析(BIA):主要な業務プロセスに対する影響を評価し、中断が企業に与える影響の大きさを分析します。

事業継続戦略の策定

・代替作業場所の確保:災害時に使用できる代替のオフィスや施設を事前に確保
・ITシステムのバックアップと復元計画:データのバックアップと復旧計画を策定し、定期的にテストを実施
・サプライチェーン管理:主要なサプライヤーとの契約を見直し代替供給ルートを確保

緊急時対応計画の作成

・緊急連絡網の整備: 従業員、取引先、顧客との緊急連絡網を構築し、最新の情報に更新
・避難計画の策定: 従業員の避難経路と集合場所を明確にし避難訓練を定期的に実施
・応急処置訓練: 従業員に応急処置や救命措置の訓練を行い緊急時に迅速に対応

資源の確保

・緊急用資材の備蓄: 食料、水、医療品、発電機などの緊急用資材を備蓄
・重要文書の保管: 重要な書類やデータを安全な場所に保管し、アクセス可能な状態にする

従業員教育と訓練

・BCPの周知と教育:BCPの内容を従業員に周知し、役割と責任を明確化
・定期的な訓練と研修:緊急時の対応能力を高めるために、定期的に訓練や研修を実施

コミュニケーション計画

・メディア対応計画:災害時に公的なメッセージを迅速かつ適切に発信するためのメディア対応計画を策定
・社内外への情報提供:緊急時に従業員や取引先、顧客に対して必要な情報を提供する手段を確立

継続的な見直しと改善

・BCPの定期的な見直し: 企業環境やリスク状況の変化に応じてBCPを定期的に見直し、必要に応じて更新
・演習結果のフィードバック:訓練やその結果を分析しBCPの改善点を特定して反映

2.適切な組織体制と危機管理方針を整備

次に、適切な組織体制と危機管理方針を整備しましょう。組織体制については経営層が主導し、全社的な取り組みを推進する体制が求められます。また、災害時における具体的な危機管理方針を策定することで、発生時の対応や優先順位が明確になります。

基本方針には、災害対応の目的や目標、緊急時の連絡体制、事業継続に必要な機能やリソースの確保方法などを盛り込むと良いでしょう。

3.BCPの運用・評価・改善を継続的に実施

BCPは策定して終わりではなく、運用、評価、改善を継続的に実施しPDCAを回すことが重要です。

まずは、策定したBCPを実際の業務に適用し、実践的な視点から評価を行いましょう。その後、定期的にBCPの見直しや改善を行うことで、変化する事業環境やリスクに対応することが可能になります。このような取り組みを通じて、企業の事業継続力を向上させることができます。

災害別・業界別のBCP策定事例とその対応

災害別・業界別のBCP策定事例とその対応では、対策の目的や方針、手段などが異なります。特に、日本で多発する「地震」による被害が予想される場合、建物の耐震補強や緊急用電源の設置、従業員の安全確保対策が重要です。

地震災害に対応したBCP事例として、近年の東日本大震災や能登半島地震を受けて、多くの企業が地震に対する対策を見直しています。その中で、安全確保や避難手段の整備、事業再開に向けた復旧計画の策定などが行われています。

業界別のBCP策定事例としては、金融業界ではシステムの二重化や遠隔地でのバックアップデータセンターの設置、サービスを継続させるための復旧計画が作成されています。一方、製造業では、生産ラインの代替案を準備し、供給チェーンの強化や経営資源の確保が重要視されています。このように、業界毎に自然災害や事故など様々なリスクを想定し、適切な対応策を組み込んだBCP策定が求められます。

自然災害

自然災害には、地震、津波、台風、豪雨、洪水、火山噴火、豪雪などが挙げられます。日本では、地理や気候条件から地震と津波の被害が大きく、事前の対策が求められます。自社が位置する地理条件を鑑みて、自然災害のリスクを想定したBCPを策定しましょう。

地震発生時のBCP

地震発生時においては、防災訓練と避難計画が企業の事業継続に大きな影響を与えます。防災訓練では、従業員が緊急時の対応を理解し、適切に行動できるよう教育や訓練を行いましょう。

訓練では、地震発生時の避難ルートの確認、避難所の設定、安全確認手順の確立などが挙げられます。また、避難計画には企業の規模や立地条件、従業員の人数などに応じた適切な避難経路や避難所が設定されます。

これらの避難計画を策定する際には、地域防災マップや業界や地域の事例を参考にし、自社に適した対策を組み込む必要があります。

火災発生時のBCP

火災による被害の軽減策として、火災報知器や消火器の設置、防火壁や遮煙設備の整備などが求められます。また、事業継続対策としては、データのバックアップや代替生産拠点の確保、取引先との協力体制の構築などが挙げられます。

火災発生時に、速やかに事業の復旧・再開が可能となるよう、事前に計画や手段を検討しておくことが大切です。

人為災害

人為災害とは、人間の行動や過失により引き起こされる災害のことをいいます。これには、技術的なミス、不正行為、テロリズムなどが含まれます。

具体的には、設備の故障や爆発、ソフトウェアのバグやシステム障害、工場排水の漏出、爆破や放火、ヒューマンエラーによる事故などがあります。

人為災害への対策には、従業員への危機管理に対する教育や周知徹底などを行い、日頃からリスクへの意識向上を図ると共に、社内のセキュリティ強化や労働環境の見直しなどを実施することが望ましいでしょう。

IT災害

IT災害とは、情報技術(IT)システムやインフラに関連する問題や障害が原因で、企業や組織の業務に重大な影響を及ぼす災害のことをいいます。データの損失、サイバー攻撃、ハードウェアの故障などが含まれます。

IT災害の対策には、セキュリティ対策の強化や、定期的なバックアップ、サイバーセキュリティの意識向上と対策の周知、ネットワークやシステムのリアルタイム監視を行い異常を早期に検出するなど、内外からの対策が求められます。

感染症災害でのBCPの重要性

世界的な感染症拡大では、リモートワークやシフト制度などの対策を迅速に実施し、業務を継続することが求められました。ここでのBCPの役割は、業務継続手段の整備や従業員の安全確保、取引先とのコミュニケーション維持など多岐にわたります。

感染症障害への対策には、飛沫・接触・空気感染への防止対策(手洗いうがい・マスク着用・健康管理など)をはじめ、濃厚接触者の特定と連絡、必要に応じた事業所の一時閉鎖や消毒を実施する手順を明確化する、重要業務のリモート化やオンライン会議の積極導入、フレックスタイムや在宅勤務など勤務体制の選択化などが挙げられます。これらの対策を組み合わせることで、企業は感染症災害に対する備えを強化し、従業員の健康と安全を守りながら事業を継続することが可能になります。

まとめ:災害時に役立つBCPを策定し危機に備えよう

BCP策定の成功には経営層のバックアップが不可欠であり、組織全体でBCP策定の重要性を認識することが求められます。組織内の役割や責務を明確にし適切な情報共有を行うことで、災害時でも事業を継続し続けることが可能になります。

自社がおかれている災害へのリスクを正しく理解した上でBCPを策定し、定期的に見直し・改善を実施していきましょう。

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