BCP(事業継続計画)とは?
『BCP(事業継続計画)』は、企業や組織が災害や緊急事態に直面した際に、業務を継続し、最小限の影響で事業を運営するための計画です。
BCPは、従業員の安全確保、業務の継続性確保、システムやデータのバックアップ・復旧、顧客サービスの維持などを含みます。BCPは、災害が発生した際の企業の行動計画であり、復旧や復興を促進することを目的としています。
防災対策とBCPは同じ概念?
防災対策とBCP(事業継続計画)は類似していますが、異なる概念です。
防災対策は、災害や緊急事態が発生した際に被害を最小限に抑えるための取り組み全般を指します。これには、建物の耐震化、避難計画の策定、非常用品の備蓄、災害時の連絡手段の整備などが含まれます。防災対策は、地震や洪水、火災などの自然災害に限らず、テロやサイバー攻撃といった人為的な災害にも対応することが求められます。
つまり、防災対策は災害そのものへの備えを含む一方、BCPは災害が発生した場合に事業を継続するための計画です。両者は互いに補完しあう関係にあり、企業が総合的なリスク管理を行うためには、両方の取り組みが重要です。
歴史を紐解くと、BCPの概念は、実際の災害や緊急事態に対処する必要性が高まった20世紀中頃にさかのぼります。しかし、その具体的な形や普及は、比較的最近のことと言えます。
1960年代から1970年代にかけて、コンピューター技術が発展し、企業がコンピューターシステムを利用するようになると、ビジネス環境においてシステム障害が深刻な問題となりました。この頃から、企業は業務の中断やデータの損失を最小限に抑えるための計画や対策を考え始めました。その後、1980年代には、災害発生時の事業継続性を確保するための包括的な計画がBCPとして整備されるようになりました。
特に、1990年代には、災害(地震、水害、台風など)に限らず、テロ事件、サイバー攻撃といったリスクに対処するためのBCPが重要視されるようになり、多くの企業がBCPを策定・実施するようになりました。さらに、2000年代に入ると、国際的な規制や規格(例:ISO 22301)が整備され、BCPの重要性がより広く認識されるようになりました。
現在では、BCPは企業や組織がリスクを管理し、事業継続性を確保するための不可欠な要素として位置付けられています。

BCPマニュアル策定の参考にできる情報はどこにある?
政府や公的機関がまとめている、また策定に役立つ情報は世の中に多数存在します。
その中でも基本として利用できるものは2つあります。
・内閣府 防災の情報ページ
ガイドラインや、各省庁が発しているメッセージ・情報をひとまとめにして提供されています。また、事例も合わせて掲載されていますのでこれから策定する企業にとって有益な情報を手に入れることが可能です。
・中小企業庁 中小企業BCP策定運用指針
中小企業庁が、中小企業へのBCPの普及とその策定・運用促進を目的として作られているページです。また優れているのは指針に沿って作業をすればサンプルのような書類を作成することができる点です。これから策定する企業や、更新するタイミングで利用すると有益な情報を手に入れることが可能です。
BCPマニュアル策定時に注意するべきポイントは?

①優先度をつけること
単一の商品やサービスを展開する企業もあれば、様々な商品やサービスが存在する企業もあります。災害等の発生時には、限りある人員や資機材の範囲内で、事業を継続させ、基本方針を実現しなければなりません。 そのため、限りある人員や資機材の中で優先的に製造や販売する商品・サービス(以下、重要商品という)をあらかじめ取り決めておく必要があります。
②被害の種類による影響を想定すること
企業が影響を受ける災害には、地震や新型インフルエンザ等、様々なものがあります。そして、こうした災害により、企業が受ける影響のイメージを持つ必要があります。
③事前の対策の実施すること
①②で優先度をつけ、様々な災害に応じた想定をしていると思います。
次は、緊急時においても、必要な経営資源を確保するための対策(事前対策)を平常時から検討・実施しておくことが重要です。
事前対策には「人」「情報」「物」「金」のようにカテゴリを分けて対応準備を行うと、漏れがなくなります。
例えば「人」に関する事前準備は、「安否確認ルールの設定」「代替要員の確保ルール」が当てはまります。また、「金」では、例えば緊急時に工場や製造ラインが停止した際に必要な資金の把握や、そのリカバリー手段の確保、また即座に利用できる現預金の準備まで当てはまります。
そして、想定した災害・そしてマニュアルに沿った訓練も、有事の際にもBCPの実行に不可欠な要素となります。
いつ、何が起こるかわからない災害に対して、全て担当部署・担当者で策定から運用、有事の際の実行までを行うことは、実行可能性の観点から見ても危ういと考えることができます。リソースの分散を行い担当部署・担当者でないとできないことと、うまく他社の商品やリソースを利用することも視野に入れBCPの策定に臨むことも一つの手段と言えます。